【ガスパビリオン おばけワンダーランド】押しつけないから届く。没入する楽しさで心に残る体験をつくり出す

その中心には、小学校高学年をメインターゲットに据えた体験設計があります。未来の担い手である子どもたちに向けて構築された体験だからこそ、キャラクター、XR技術、ストーリー、さらにはXRゴーグルの安全性検証まで一貫性をもって磨き込まれました。
「最大のこだわりは『楽しい』と感じられることです。体験中にこちらの言いたいことを詰め込みすぎない。伝えるべきことは体験後のゾーンで丁寧に補完する設計にしました」と語るのは、副館長の原寛之さんです。

副館長の原寛之さん
メインの体験ゾーン「化ける体験エリア」には、「バケルゴーグル」と名づけられたXRゴーグルが置かれ、説明に従いながら装着。体験がスタートすると、リアルとバーチャルが融合し、おばけの世界に没入します。一人ひとりがおばけに化けて、アイテムをキャッチしたり、協力しながら謎の巨大おばけを倒したりと、エンターテインメント性に富んだ演出が展開されます。

XRゴーグルを通して見る風景は、ただの映像ではなく、全身が引き込まれていくような異世界体験を生み出していた。
「XRゴーグルは早い段階から採用を決めていました。ただし安全性と年齢要件の検証は徹底しました。専門家の知見も取り入れ、小学校低学年でも問題なく装着・体験できるかを繰り返しテストしています。その結果、難しい説明ではなく、“楽しいおばけの世界を体験する”というストーリーを通して身体感覚に落とし込める構成となりました」
見えないものを「見える化」する発想とXRの親和性は高く、子どもでも直感的に入り込めます。ワクワクを前に出しつつ、CO₂やメタンといった目に見えないものを身体感覚に落とし込む切り口が秀逸です。
体験のクライマックスでは、全員で力を合わせて謎の巨大おばけを倒します。声や動作が演出と連動し、個々の体験を超えて、参加者同士が連携。XRの“パーソナル鑑賞”を“集団体験”へ拡張した最大の肝です。
「みんなで叫んだり、同じ現象を同時に目撃したりする。身体を通した共通体験は、記憶への定着度が圧倒的に違います」

全員で「化けろ~!」と叫びながら、レーザーで敵を倒している様子。夢中で手を伸ばし、声を合わせるうちに、会場全体が一体化していく

紗幕に映し出されたミッチー。無駄にたくさんのものを作ったり、消費したりして⽣まれたCO₂が、e-メタンという新しいエネルギーになる仕組みをかみ砕いて解説

最後のパネル展示ゾーン。ここにも、「バーを回すと上からおばけが現れる」というエンタメ要素を感じる仕掛けがあった
スタッフの声かけや笑顔、衣装までもが空間演出の一部として機能していた点は、たしかに印象的。コンテンツの余韻を支えるもうひとつの演出であり、空間プロデュースにおいて忘れてはならない要素だと感じられました。
また、サステナビリティは、演出だけでなく建築の素材にも及んでいます。「解体すれば終わり、ではない。解体した“その先”を見据えた建築にしました」と原さんが話すように、外装には大阪ガスが開発した放射冷却素材「SPACECOOL(スペースクール)」を採用。外皮で熱を遮ることで空調負荷を下げる実証も行っています。
主要構造は山留め鋼材や単管パイプなど再利用前提の資材で組み、会期後はそのまま別現場に循環できる設計。半年で解体する万博建築の宿命に対し、使い回せる資材で応えています。
建築面でも持続可能性を徹底し、細部に至るまで「未来をどう形づくるか」を問い続けたパビリオン。テーマパークのような楽しい体験を入口に、言葉で伝え過ぎず、体験や身体感覚、空間全体の演出で理解を促進する――それこそが、このパビリオンが提供する最大の価値だと感じました。
【三菱未来館】深海から宇宙まで、いのちをめぐる壮大な旅


パビリオン自体も地上に浮かぶマザーシップのような形状

三菱未来館の公式キャラクター、ViVi(左)とNaNa(右)が旅の案内人

物語のはじまりは地球と生命の誕生から。インパクトのあるアニメーションで観る人を引き込む
旅はやがて地球全体へと広がります。小さな生命が海を満たし、陸へ進出し、多様な生態系を形づくっていく様子が、迫力ある映像と音響演出で再現されます。こうした空間演出は、観客の視覚と聴覚を包み込み、映像鑑賞を超えた「進化を追体験する感覚」を呼び起こしました。
次にバーティカルシャトルは地球を離れ、宇宙へと飛び立ちます。到達するのは地球の双子の星とも呼ばれる火星です。NASAの観測データをもとに再現されたオリンポス山やマリネリス峡谷がスクリーンいっぱいに映し出され、圧倒的なスケール感を体感できました。さらに、未来の火星基地を訪れるシーンでは、人類が火星に生活の場を築く可能性が描かれ、いのちの旅が地球を超えて広がる未来を実感できました。

火星基地のイメージ映像が続き、未来の宇宙開発の一端を垣間見ることができる
「赤茶色で覆われた地表面も、ただのイメージではありません。地表の土の色・岩の形などは、NASAの探査機が火星のあらゆるポイントで撮影した写真を参考にしました。かつてSFの世界で語られていた火星移住の夢も、今では各国が本気でその実現に向けて動き始めています。将来、最初に火星の大地に足を踏み入れる人類の前に広がるのは、まさにこの壮大な景色――科学が紡ぎ出した、リアルな火星の姿だと言えます」
展示のクライマックスでは、「なぜ地球にはいのちが満ち、火星は砂に閉ざされてしまったのか」という問いが提示され、映像に映し出される青い地球の姿は、観客に「奇跡の星」の尊さを強く訴えかけました。深海から宇宙までをめぐった後に見つめる地球は、出発前とはまったく違った意味を持って迫ってきました。

最後に美しい地球が出現

映像を観終えた後、出口へ向かう通路には、三菱グループの取り組みを紹介するパネル展示が並んでいた
【大阪ヘルスケアパビリオン】25年後の自分と対面。「REBORN」をテーマにつながり合う体験型パビリオン

一般的な体験にとどまらず“私だけのリボーン体験”として未来世界に入り込んでしまう。その理由は体験ルートにあると、山縣敦子さん(大阪ヘルスケアパビリオン広報・催事課長)は話します。
「自分を知る→25年後の自分に出会う→未来のヘルスケアを体験する→25年後の未来都市を体験する。この一連の流れがパビリオン全体の一体感を生んでいます」。
ゲストはまず、リボーンバンドを手首に装着しカラダ測定ポッドへ。約6分間で7つの項目(心血管や筋骨格、髪、肌など)を測定し、自身のカラダ測定年齢や健康状態を知ります。

7項目に加え、アプリでは40項目以上のカラダ測定結果が確認できる

アバターとして25年後の姿を見せるのは、未来を“自分事”として捉えてもらうため
ブースごとに設置されたたまごマークのセンサーにリボーンバンドをかざせば、各ブースの体験が記録され、自身の健康スコアがアップ。未来の自分に少しずつ変化が現れます。

ゲストの健康データに基づいたレシピをおすすめされたり、ヘルスケアにちなんだサンプルなどが提供されたりする

フィナーレのダンスパレード。アバターたちは外見にも変化が現れる
自分にも未来があることを確かに感じ、ポジティブに受け止められる。ワクワクする未来が待っていると感じられる体験でした。
【いのちの未来】いのちについて考えるきっかけに。アンドロイドを含むロボットと人間の50年後と1000年後の世界を描く

テーマは「いのちを拡げる」。命の源である「渚」が水で表現され、滝の先には渓谷のように拓けた空間が。「アーチ状の入口から滝を抜けるとモニターに映るアバターが迎えてくれます。流れる水の向こう側で50年後、1000年後の世界を体感し、また水を抜けて現代へもどってくる。水は空間を切り分けるという役割も担っています」と西島亮さん(2025年日本国際博覧会協会)。
運営面で石黒先生と目指したのは184日間で得られる膨大な記録と経験を未来に残すこと。人はサポートにまわり、ロボットやアバターが主体として行う運営を実証実験として導入しました。労働力不足を補うAIアバターやロボットたちは少人数の遠隔操作で成り立つ未来を実際に実演してみせました。本番期間中に得られたデータはこの先の研究に大きな成果として役立つと信じています。

アンドロイドアバター「ヤマトロイド」。人、猿、植物をモチーフにした個性豊かなアバターロボットたちと館内をめぐる

来場者が乗り込む50年後の列車。違和感なく受け入れられるよう現代の列車の雰囲気を残しながらも、座席にはアンドロイドの少年がごく自然に座っている

イントロダクションとして形あるものに命を宿す日本文化を紹介。来場者はいのちの歩みをふり返ると同時に、アンドロイドが生きる未来への想像を掻き立てられる

現代と変わらない、ありふれた孫と祖母の日常を追体験。特別なものではないからこそ、未来の選択がよりリアルに胸へと迫る

ラストに登場する三体のアンドロイド「モモ」。姿は進化し、なめらかでより人間に近い印象を受け、アンドロイドと生きる遠い未来世界を想起させる
SNSでは「色々な視点からいのちについて考えさせられる」という感想が圧倒的に多いのだとか。自分ならどうするか、家族に何を望むか――来場後はその議論が尽きないといいます。「うれしかったのは、海外の方も同じような感想をもたれているということ。国籍や言語を超え、私たちが伝えたいメッセージが、技術を通して届いているのだと実感しました」と西島さん。命の可能性や、命のあり方を知り、果たして自分はどう生きていくのか。当事者として答えを探し、考え続けるきっかけを与えてくれる体験でした。
