【パナソニック ノモの国】光と風に揺れる建築が印象的。「結晶」デバイスで物語に参加
全面を覆うのではなく、あえて3分の1程度を揺らめく状態で残すことで、自然の風が通り抜け、光と影が揺れるように演出されています。外から見ても建築が“呼吸”しているかのように感じられ、未来的でありながら自然と調和するデザインとなっています。
風にはためくオーガンジーが幻想的な異世界感を演出
制作プロセスにも子どもたちを巻き込み、企画段階から参加してもらう試みも行われました。子どもの想像力や発想を展示に取り入れることで、未来に開かれたパビリオンとしての姿勢を体現しています。「ノモの国」総合プロデューサー原口 雄一郎さん(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社)は、次のように話します。
「子供たちは本来自分のやりたいことや興味を持っていても、社会のルールや思い込みで抑えてしまうことが多いと感じます。今回のパビリオンを通じて、そうした感覚を解き放つきっかけになればと思っています。これまでパナソニックとして若い世代の課題に深く寄り添う機会は少なかったので、パビリオンを通じて、研究者や技術者が直接子供たちと接し、新しい気づきを得られることを目指しました」
「ノモの国」の内部に入ると、ピンク色の光の粒が床や壁に投影され、まるで身体ごと映像世界に溶け込むような没入感。足元に広がる光の粒が来場者の動きに呼応することで、自分自身の存在が空間とつながっていく感覚を得られます。こうした体験は「自然と人間の境界を溶かす」ことを意図した演出であり、五感を通じてテーマを直感的に理解できるよう設計されています。
光や音、インタラクティブな体験要素が盛りだくさん
「カガミイケ」を通じて“物と心が映り鏡になる世界”という異世界感を演出。来場者に渡される結晶のようなかたちをしたデバイスは、パビリオン体験の鍵です。自由に触れて“パワー”を貯めるように働きかけられます。持ち歩くことで、自分の存在が空間と相互作用し、映像や音響の反応を生みます。大滝のようなミストウォールをくぐる場面では、結晶に映る光が変化し、物語の進行を視覚的に実感できます。
来場者に一人一個手渡される結晶デバイス
結晶デバイスをさまざまなオブジェクトにかざすと光や音が反応する仕組みで、「自分の行動で世界が変化する」という感覚を体験する装置として機能
結晶デバイスを機械の前に置き、性格判断できる装置も
うちわ型のデバイスでボール型の装置を仰ぐと床面に蝶が現れ、空間に蝶が羽ばたく演出
【EARTH MART】食の可視化で理解を深める。いのちの循環と未来の食卓
来場者をまず迎えるのは、全国各地から集められた茅で葺かれた大きな屋根です。隈研吾建築都市設計事務所が監修し、熟練の職人によって仕上げられたこの屋根は、自然との循環や共生を象徴しています。複数の屋根が重なり合う造形は、まるで市場の賑わいを思わせ、入場の瞬間から「食が人を集める場所」というテーマを感じられる演出になっています。
ひときわ目を引くパビリオンの屋根
「巨大スクリーンのアニメーションから始まる『プロローグ』では、食といのちの循環を映像で示し、来場者を物語の世界へ誘います。続く『いのちのフロア』では、普段の食卓にある食材がどれほど多くのいのちに支えられているかを体感的に理解できます。」(実施制作統括プロデューサー)
「一生分のたまご」では、日本人ひとりが一生で約2万8000個の卵を食べるという事実を、空間いっぱいに並ぶ卵で表現。さらに「いのちのカート」では、日本人が10年間で消費する食料の体積を巨大なショッピングカートで可視化し、来場者に圧倒的なスケール感を与えます。
天井から卵がしたたり落ちるようなインパクトのある展示「一生分のたまご」

約11立方メートルの大きさで日本人1人の食料消費量を視覚的に表現した「いのちのカート」
「食べ物の重さ」を量る秤ではなく、「いのちの重さ」を可視化する象徴として設置されている「いのちのはかり」
後半の「未来のフロア」では、伝統と最新技術が交わる空間演出が際立ちます。「未来を見つめる鮨屋」では、すきやばし次郎の小野二郎氏が養殖魚を握る映像と共に、カウンターを模した空間に来場者を迎え、鮨文化の未来を考える場を演出しています。
11年連続ミシュラン三つ星を獲得し、ドキュメンタリー映画でも有名になった「すきやばし次郎」の小野氏がもてなしてくれるようなリアルな演出
未来の冷凍食として食材をパウダー化する技術を展示

アイデアイラストを展示したコーナー「未来のお菓子」

日本が長年培ってきた「食材・食品・知恵・技術」の中から25を厳選した「EARTH FOODS 25」
お皿が整然と置かれた円卓
プロジェクションマッピングで、食にまつわるさまざまな映像が投影される
大切なメッセージを伝えるビジョンとしての役割も

出口の扉の上にさりげなく刻印されている「Welcome to EARTH MART」
【PASONA NATUREVERSE】アンモナイトからiPS心臓まで。「いのちを大切にしたい」思いを醸成する

「NATUREVERSE」とは「ネイチャー」と「ユニバース」から成る造語で、同パビリオンでは、時空を超えたブラック・ジャックの手によってiPS心臓を埋め込まれて再生した「ネオアトム」と、まさにその手術を施した「ブラック・ジャック」のナビゲートにより、自然とテクノロジーを融合させた未来世界を体験します。
最初に足を踏み入れるは「生命進化の樹」内部。「過去があるからこそ未来があるんです」と小沢 達也さん(NATUREVERSE総本部 万博本部 副本部長)。
「過去から未来を0~10の層が重なる一つの大きな木で表現し、その幹から伸びる枝が次の空間へとつながり、未来世界「NATUREVERSE」へと続きます」。今生きているわずかな時間しか知らない私たちに、太古からはるか遠く未来まで続く大きな時間の流れに目を向ける最初の場として有効な役割を果たしています。

樹の下には底の見えない海=生命のいない世界が広がる。樹木の内部は層に分かれ、見上げるにつれて地球のいのちが進化していく
ただゆらめいているようにも見える小さな「iPS心臓」。じっと見ていると確かに自らの意思でドク、ドク、ドクと動いているのが分かります。自分の拍動と重なるような錯覚すら感じ、私の心臓も同じように動いているんだという不思議な感動とともに、徐々に心が動き出します。

ゲストが必ず足を止める「iPS心臓」。大多数の人が初めて目にする拍動に興奮、多くの目を引き付けるポイントとなっている
また、電極シールを体の部位に貼り、脳神経から出る信号をキャッチして体を動かす「HAL」という医療用装着型ロボットや、実際にベッドに横になり体感できる「未来の眠り」ブースなど、目で見て、体験できるブースが続きます。信じられない気持ちと、こんな未来が待っているのかという高揚感で、どのブースでもゲストのどよめきが。あまりの驚きに最後には自然と拍手が生まれるほどです。

現在・近未来・遠い未来の医療を体感できるブース。2100年以降に登場するであろう新たな医療技術のデモンストレーションに驚きの連続
キューブ型ディスプレイの動きに、音と映像が連動し、最大で高さ16mもの天井が織りなすアンモナイトの内部空間とスクリーン映像とが一体化。ブース全体が一つの惑星のように感じられ、地球の破壊と再生がよりリアルに。目の前の映像とシンクロするように悲しみ、喜びと、ここでもまた心が変化します。

自然とテクノロジーの共生を表現するNATUREVERSEショー。ゲストをその世界観に引き込んでしまう壮大なスケール
なお、会期終了後に同パビリオンは淡路島へ。移設しやすいようトラス構造を用い、解体した部材は軽量かつ人一人が抱えられる大きさにと、サスティナブルな工夫も施されています。
【アオと夜の虹のパレード】主人公と感情がシンクロする、水と空気の感動スペクタクルショー

何十億年もの昔、この星に生まれ姿形を変えながら海、空、大地、生きものをめぐる「水と空気」。地球のすべてを見てきた水と空気に未来のヒントがある。そんな想像がウォーターショーの出発点なのだそう。
アオのおばあちゃんが口ずさむ伝承歌「にじまつり」で物語は幕を開け、私たちはアオとともにおばあちゃんの静かな語りに耳を澄まします。

静まりかえった会場に響くおばあちゃんの声。来場者はその声に耳を澄まし、聞き入ることで、自ら物語の世界へと入り込んでいく

アオを導くドードー。静かなオープニングから徐々にドラマチックなストーリーへと展開していく

島を破壊するドラゴン登場のシーン。楽しくにぎやかな祝祭から一変し、不安と恐怖を掻き立てる大迫力の演出。その落差がゲストの感情を一層刺激する
「大阪湾から高台の位置にあるショー実施エリアのウォータープラザまで海水を引き込んでいるため、潮位による変動はないのですが、ベストパフォーマンスのショーを見せるために最適な水位レンジがあるんです。それが1センチ違うだけで見え方が変わってくる。さらには、ウォータープラザ内の水循環量も一定に保つ必要があり、だからその調整を毎日、毎時間行っています」と話してくれたのは現場の運営責任者。
「ウォータースクリーンは水面ギリギリに噴水ノズルがあり、水面が上昇すると左右の拡がりがきれいに見えないんです」と話すように、素人目には分からずとも、ちょっとした差が見え方に影響するため、水位の調整に苦労するのだとか。ほかにも天候はもちろん、風の向きや速度などによって噴水量の調節も欠かせないといいます。実際の運営にあたっては、繊細な努力の積み重ねがショーを盛り上げ、ゲストの感動へとつながっていることを改めて実感しました。

当日の風の向きや流れ、さまざまな自然現象が計算しつくされ、光と水がダイナミックに調和している
